『赤ちゃんも満足する 母乳育児の3ポイント』発刊によせて
東京電機大学先端工学研究所
育児工学者・博士(医学) 小谷 博子
1989年、WHOとユニセフは、世界のすべての国、すべての産科施設に対して「母乳育児成功のための10カ条」を守ることを呼びかけました。
この10カ条には、
「母親が分娩30分以内に母乳を飲ませるように援助すること(早期接触)」
「赤ちゃんと母親が1日中24時間、一緒にいられるようにすること(母子同室)」
「赤ちゃんが欲しがるときに、欲しがるままの授乳をすすめること(頻回授乳)」
などが示されています。
1991年から、この「母乳育児成功のための10カ条」を長期にわたって遵守している施設を「赤ちゃんに優しい病院」(BFH:ベビーフレンドリーホスピタル)として認定する制度も始まりましたが、日本において「赤ちゃんに優しい病院」の認定を受けた施設は、未だ48施設にしかすぎません。これは日本の産科施設の約1%です。
その貴重な産科施設の1つが、本書の著者たちの「ゆのはら産婦人科医院」です。
ゆのはら産婦人科医院は、2001年に「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されて以来、これまで出産をされたお母様方とともに施設をあげて母乳育児支援に取り組んでこられました。本書では、「早期接触」「母子同室」「頻回授乳」を3 ポイントとして、母乳育児についてとてもわかりやすく紹介しています。身近に「赤ちゃんに優しい病院」がない妊婦さんでも、本書を読むことで、母乳育児のコツをつかむことができることでしょう。
私自身、2人の子どもを出産すぐから完全母乳育児で育ててきました。産後すぐにカンガルーケアを行ってから、授乳をするたびにとても幸せな気分になりました。この母乳育児の不思議な力を明らかにすべく、出産後、育児工学という分野に転向し、現在は「出産による女性の脳の変化」を研究しています。1人でも多くのお母様と赤ちゃんが母乳で育てられる幸せを願い、本書を強く推薦する次第です。